平成29年度夏季展「長谷寺・仏教美術の至宝ー美術工芸品編ー」

「長谷寺・仏教美術の至宝―絵画編―」に続く収蔵品展第3弾。長谷寺が所蔵する美術工芸品の展覧会を開催いたします。

当山を代表する金工品のひとつ、梵鐘。文永元年(1264)の銘をもつこの作品は、伝説に彩られた創建譚をもつ鎌倉長谷寺が、歴史の表舞台にはっきりと姿を現した時期を示す貴重な資料といえます。

梵鐘 文永元年(1264) 重文

 

当時の仏教界では、浄土宗・禅宗などの新仏教と並んで、古くからの仏教の内部でも革新運動がおこり、釈尊の教えの原点に帰ろうとする熱い気運がみなぎっていました。

なかでも、奈良・西大寺の叡尊(えいそん/えいぞん、1201-90)と、彼に師事した鎌倉・極楽寺の忍性(にんしょう、1217-1303)は目覚ましい活躍をみせました。当山には、そうした忍性との関わりを示唆する伝承も多く、極楽寺を中心とする真言律宗文化圏の影響下にあったことが推測されます。

本展では、第1章「鎌倉長谷寺の密教美術」にて、長谷寺における真言宗や真言律宗の足跡を示す密教法具の数々を一堂に展示します。あわせて、真言律宗でも重んじられた仏舎利信仰の隆盛を物語る舎利塔・宝塔をご覧いただきます。

舎利塔 文安4年(1447)
舎利塔 文安4年(1447)

続く第2章「懸仏」では、神仏習合を象徴する当山の至宝・十一面観音懸仏六面や、境内からの出土品など、数々の遺例を展示いたします。

十一面観音懸仏 文永元年(1264) 重文
十一面観音懸仏 文永元年(1264) 重文

 

最後に、第3章「荘厳と供養」において、神仏を敬うための多様な信仰用具をご紹介します。

華籠 室町時代
華籠 室町時代

中世都市・鎌倉に生きた人々の、篤き祈りを伝える名品の数々。時を超えて伝わる信仰の精華をぜひご堪能ください。

また、夏休み企画として、お子さま向けのワークシートを配布するほか、奈良国立博物館/読売テレビ様の格別の御厚意のもと、アニメーションDVD『笑顔のお坊さん忍性 すべては、母から始まった。』を館内にて特別上映いたします。あわせてお楽しみください。

学芸員によるミュージアムトーク【7月の開催日程】

展示の見どころを当館の学芸員がわかりやすく解説します。
参加を希望される方は、14時までに観音ミュージアムにお越しください。
皆様のご参加をお待ちしております。

【ミュージアムトーク開催日】
7月15日(土) 14時~
7月29日(土) 14時~
各回30分程度

※都合により中止となる場合もあります。

ミュージアムも花盛り ーあじさい特集開催中!-

鎌倉長谷寺では、今年もあじさいの花が色づき始めました。6月初旬は3~4分程度の開花状況だったのですが、ここ数日で一気に開花が進んでいます。

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観音ミュージアムでは、一足先に満開のあじさいを楽しんで頂けるよう、「特別公開あじさい屏風 長谷寺あじさい図鑑」を開催中です。
日本画家・佐藤宏三先生の大作《あじさい径と観音堂》に加えて、長谷寺のあじさいのことが何でもわかる写真パネルも展示しています。
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なかでも注目を集めているのが「うちわ」。
長谷寺では、10年ほど前から、6月に訪れるお客様にオリジナルのあじさいうちわをお配りしています。下の写真は初期のころの試作品ですが、当時は現在に比べて花の種類も少なかったためか、黒を基調とした比較的シンプルなデザインとなっています。このデザインのうちわは実際には配布されることはなかったため、観音ミュージアムでの限定公開となります。
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下の写真が、現在配布されているうちわ。うちわを片手に散策しながら、花の名前が分かるように工夫されています。
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裏面には、当山の松田寿空上人による楽しいイラストマップもついています。
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松田上人は、このほど絵本『はせでら不思議物語』を出版されました。書店、ネットのほか、もちろん長谷寺でもお求めいただけます♪

アマゾンでのお求めはこちら。
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古都鎌倉があじさい一色に染まる6月。今月のギャラリートークは、通常の月とは趣を変えて、「専門職員によるあじさいトーク」をおこなっています。あじさいだけでなく、全山を彩る四季の花々を真心をこめて育てているスペシャリスト集団が、長谷寺の「境内管理室(通称:「境管」)」です。
今回は、勤続25年以上のベテラン・堀口さんにお話をお願いしました。

去る6月3日の土曜日、初回のトークに参加してみました。時にユーモアをまじえながら、お客様からの質問に丁寧に答えていく堀口さん。目からウロコのお話がたくさんありましたが、特に印象に残ったのは、あじさいをきれいに咲かせるために「やってはいけないこと」についてのお話。剪定や施肥のタイミングなど技術的な側面はもちろんのこと、「かわいがって大切にしすぎてもダメ。植物にも適度な危機感が必要なんです」。

考えてみれば、私たちが見て楽しむ花々は、植物にとっては子孫を未来につないでいくための懸命な努力の結晶なのですね。あまりに快適な環境だと、植物もその努力を怠ってしまうのだそうです。だから、お水や肥料もたくさんやりすぎず、鉢植えの場合も小さな鉢からいきなり大きな鉢に移したりせず、あえて多少の負荷を加えることで植物自身の自律的な成長を促すということ。
お話を伺って、いささか月並みな感想ですが「かわいい子には旅をさせよ」ということわざを思い出しました。植物に対して真に愛情を注いでいるからこそ、時期に応じた最も適切な育て方ができるのでしょう。

あじさいトークは6月中の毎週土曜日に開催しています!

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6月9日の朝、展示中の屏風《あじさい径と観音堂》とほぼ同じアングルで撮った1枚。日に日に花の色が濃くなっていきます。満開まであと少しです。ご期待ください。

自然の美と芸術の美にともにふれることができる、6月の長谷寺と観音ミュージアム。みなさまのお越しをお待ちしています。

(学芸員Mn)