「暑さ寒さも、彼岸まで」ーー。春と秋の「お彼岸」は、四季のうつろいが明瞭な日本列島で独自に発達した宗教行事であり、千年以上の長きにわたって日本人の生活に深く根を下ろしてきました。
「彼岸」はサンスクリット語paraの漢訳で、われわれ衆生の生きる迷いの世界(此岸)に対し、悟りの世界を「向こう岸」にたとえたものです。「悟りに至る」ことをparamita(波羅蜜多)といい、それを漢訳した語が「到彼岸」です。浄土教の発達とともに、死後の極楽往生を指す語としても用いられるようになりました。この到彼岸の概念が、先祖を敬う日本人の心と結びつき、年中行事としての「お彼岸」が成立したと考えられます。さらに、「隠国(こもりく)」とよばれた大和長谷や紀伊熊野に象徴される日本独自の来世観は、「彼岸」にまつわる信仰と芸術の発達を促しました。このたびの「秋の名宝展」では、浄土・熊野・長谷をキーワードに、館蔵の優品をご紹介します。長谷信仰ゆかりの美術作品として、恒例の《長谷寺縁起絵巻》の公開も行います(今年度は上巻を展示)。
月: 2024年10月
夏の名宝展 会期延長のおしらせ
開催中の夏の名宝展「水辺の叙景 清方と祥啓」は、ご好評につき10月26日(土)まで会期を延長いたします。なお、次回は11月1日(金)より秋の名宝展「到彼岸 やすらぎの国へ」を開催いたします。
(10月27日から31日はお休みさせていただきます。)