七福神と動物の意外な関係から見る浮世絵のおもしろさ!

すっかりブログの更新がご無沙汰になってしまい、申し訳ございません。
今年はもっと書けるよう頑張ろうと思います!

ではさっそくですが、今回は現在観音ミュージアムで開催中の「大黒さまとねずみのひみつ ― 七福神のうたげ ―」の中から一つの作例を取り上げて、七福神と動物の意外な関係について、そして浮世絵の奥深さについてご紹介します。
皆さんは七福神と動物に関係があることをご存知でしたか?
実は七福神には、「神使(しんし)」と呼ばれる家来に当たる動物のパートナーが存在します。
下の作例をご覧ください。

《福神遊び宝の牧狩図(ふくじんあそびたからのまきがりず)》
江戸時代後期(19世紀)一勢斎(歌川)芳勝(いっせいさい(うたがわ)よしかつ)

ご覧いただきますと、皆さんもお馴染みの七福神の他に、動物たちが描かれていることがお分かりいただけるかと思います。
それでは誰がどの動物を神使にしているのでしょう。

七福神の名前と動物の名前を書き込んでみました。
名前を書き込んでいる枠の色が同じ色になっている者同士がパートナーになるのですが、パートナーがいない七福神がちらほら…

まずは、パートナーが成立している七福神を見ていきましょう。
左から
① 寿老人と鹿
② 大黒天と鼠
③ 福禄寿と鶴
④ 恵比須神と鯛
それぞれなぜその動物を神使としているのか理由があるのですが、それは最後に…

では、パートナーがいない七福神はというと…
向かって左から 布袋尊、弁才天、毘沙門天。
なぜ彼らはパートナーが描かれていないのか…そこを探るとこの絵が一層面白く見えてきます!

この理由を説明する前に、まずはこの作品の主題についてご説明しなければなりません。
こちらの作品は《源頼朝公富士之裾野牧狩之図(みなもとのよりともこうふじのすそのまきがりのず)》といった、かつて源頼朝が家来を従えて富士山の麓で獣を狩る、遊興を兼ねた軍事演習の様子を描いた作品を元にしていて、獣を狩る頼朝や家来を七福神に、獣を神使である動物に当て込んで描かれたのが《福神遊び宝の牧狩図(ふくじんあそびたからのまきがりず)》になります。
では、パートナーが描かれていない七福神に話題を戻しましょう。
まず弁才天は、宇賀神という人の頭に体は蛇である奇怪な姿の神と同一信仰されたことからその神使は蛇とされています。
続いて毘沙門天の神使はムカデとされています。前へしか進めない習性が「困難などに立ち向かう時は、全員が心を一つに当たるように」という毘沙門天の教えに通ずることが理由のようです。
そして布袋尊に関しては、実際に存在した僧侶であることから、神使となるパートナーは実は元からいません。

ここから推測すると、「牧狩」という主題に哺乳類でない蛇やムカデは向かないと考えられて描かれず、神使がいない布袋尊を不憫に思った画家が、粋なはからいで哺乳類である兎を布袋尊の近くに描いてあげたのかもしれません。
江戸時代の浮世絵にはこうした画家の粋なはからいや、遊び、仕掛けが盛り込まれていて大変面白い作品が多く存在します。
じっくり鑑賞してみると、普段は気づかない、様々な発見があるものです。

最後に残しておいたそれぞれの七福神がなぜその動物を神使にしているかの理由ですが、本展でも展示している解説パネルのPDFデータをダウンロードできるようにしましたので、ご入用の方はぜひ下記よりダウンロードしてください。


「七福神と動物のひみつ」

本展の会期終了は2月11日(火)と、終了も間近となっています。
今回ご紹介した作例以外にも大変ユニークな浮世絵を展示しておりますので、ぜひ実際に作例を鑑賞しにいらして下さい。
ご来館お待ちしております!

学芸員 H