福神のユニークな浮世絵「金のなる木」

現在、観音ミュージアムでは新春特別開帳として、「七福神で初笑い」を開催しています。会期中はこの期間だけ御開帳する長谷寺伝来の大黒天像(応永19年(1412)、室町時代)などの福神像の他、「笑い」をテーマにユニークな七福神の作品が公開中です。

今回ご紹介するのは、江戸時代の浮世絵「金のなる木」です。

金のなる木(かねのなるき) 江戸時代後期
金のなる木(かねのなるき) 江戸時代後期

恵比寿神と大黒天の中心にある木をよく見ると、枝の先に小判や一分銀などの金銀がなっています。また、木の幹や枝に見える部分は実は文字で描かれているのです。

しょうじき

木の一番根本の文字には「志やうぢ木(正直)」と書かれているのがわかりますか?他の部分には「あさお木(朝起き)」や「以さぎよ木(潔き)」など全部で11個の徳目が書かれています。全ての徳目が「~木」で終わっていて、とても洒落っ気が効いていますね!

この浮世絵は、「正直」を最も重要な徳として、全ての徳目を実践すれば、裕福になれることを説く教訓絵です。江戸時代においても、「正直」でいることが大切なのは現代と変わらないのですね。11個の徳目を全て知りたい方は観音ミュージアムで展示していますので、ぜひご来館ください。(展示は2月6日(月)まで。「時は金なり」お急ぎを!)

この「金のなる木」をモチーフにした浮世絵は全国に多数現存しており、「金のなる木」だけ描かれるもの、七福神全員がともに描かれるもの、商売繁盛の神である大黒天や恵比寿神とともに描かれるものなど多様な形で描かれています。また、往来物(おうらいもの・寺子屋などで使用された教科書)にも使用され、江戸の庶民はこうした「文字絵」で遊びながら文字を学んでいたようです。

また、会期中は特別企画として大黒天の「打出の小槌(うちでのこづち)」を振ることができます。この打出の小槌は長谷寺の大黒堂に長年納められていた貴重なものです。どうぞ縁起の良い小槌を振って、一年のスタートを笑顔でお迎えください!

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学芸員 U