学芸員の仕事「懸仏エアタイトケースについて」 

観音ミュージアムでは、国の重要文化財に指定されている「十一面観音懸仏(じゅういちめんかんのんかけぼとけ)」を常時展示しています。

全6面あるこれらの懸仏、実は観音ミュージアムのリニューアルオープンを機に、奈良国立博物館から2面、鎌倉国宝館から1面、計3面を返却していただき、約半世紀ぶりに鎌倉長谷寺に全てが揃ったものなのです。懸仏さん、おかえりなさい!

懸仏ケース

大切な文化財を多くの方に見ていただきながらも、いかに守るかという矛盾に対し、懸仏の展示ケースには、一般の美術館・博物館と同様に「エアタイトケース」と呼ばれる気密性の高い展示ケースを使用しています。
 
通常の展示ケースよりもケース外の空気が入りにくい構造のため、文化財には大敵の湿度の影響や細かい塵、有害ガス、また害虫などが入り込むのを防ぎ、ケース内の環境を一定に保つことができる優れものです!

懸仏ケース製作工場視察の様子 懸仏展示用の特別な仕様になっています。
懸仏ケース製作工場視察の様子 懸仏展示用の特別な仕様になっています。
ガラス面をスライドさせて開閉します。
ガラス面をスライドさせて開閉します。

特に気をつけていることは、湿度の変化です。なぜなら、資料に含まれている水分量が変化すると、極端な話ですが、ものがふくらんだり縮んだりして文化財の劣化を進めてしまうのです。
また、湿度は気候によって変動するだけでなく、展示室内への人の出入りによっても変わってくるため、毎日、展示室の状況を確認し、室内の環境を調整していくことも文化財を守る私たちの重要な仕事です。

データロガによる温湿度測定 毎日温湿度をチェックしています。
データロガによる温湿度測定 毎日温湿度をチェックしています。

来館された方もそうですが、文化財にとって心地良い空間をつくるために職員一同日々奮闘しています!

ぜひこの機会に、勢揃いした懸仏を見に来ていただき、あわせて、文化財を守っていくためにどのような取り組みをしているかについても関心を寄せていただけたら嬉しいです。

学芸員U